なぜいまファクタリングなのか?歴史や流れから理由を解説
ファクタリングついて理解したところで、「なぜファクタリングに注目が集まっているか」について解説をしていきます。ファクタリングの概念事態は古くからあるものですが、なぜこのタイミングで注目されているかを解説していきます。
ファクタリングが注目されている理由
ファクタリングの意義と現状の課題
ファクタリングは14世紀後半にイギリスで生まれ(諸説あります)、その後アメリカで発展した金融サービスで、欧米では特に中小企業向けの金融サービスとして一般的に利用されています。
日本においてもファクタリング業務の将来性に着目され、1970年代に入って銀行系を中心に相次いでファクタリング会社が設立されましたが、欧米との商習慣や金融システムの違いもあり、ファクタリングはそれ程普及せず、また、ファクタリング会社は欧米と若干異なった日本独自の業務を展開してきました。
日本においてファクタリングがあまり普及していない理由としては、主に以下の要因があげられます。
- 商社が販売機能と金融機能を果たしていたこと
- 債権譲渡取引は経営危機に瀕した企業が行うものという偏見があり、、抵抗感が強かったこと
- 手形取引が発達し、決済手段として広く利用されていたこと
- 第三者対抗要件など売掛債権譲渡を保護する法的整備が遅れていたこと
- 信用調査機能の発達が不十分であったこと、結果調査コストが高すぎたこと
- 政府が銀行中心の間接金融による金融システムを推進していたこと
上記の理由に加え、ファクタリング会社自体の構造的な要因もありました。日本のファクタリング業界を構造的にみると、ファクタリング会社の多くが銀行等の金融機関の関連会社であったため、ファクタリング業務自体が関連会社である銀行が行う融資や手形割引と競合関係にあるという矛盾を抱えていました。
銀行は超金融緩和、低金利時代での利鞘確保のため、中小企業向けの金融強化の一環として、子会社を通じてファクタリングビジネスに注目したりもしましたが、銀行本体では量的拡大に関する関心だけで、きめ細かいサービスに関心があったわけではありませんでした。
再び注目されるファクタリング
しかしここに来て、ファクタリングが新たに見直しされつつあります。
第1の要因は、IT技術の発展です。電子商取引の伸長とともにサプライチェーン・マネジメントが発達し、電子商取引上の代金回収システムとの連動が不可欠となるとともに、SCCC(サプライチェーン・キャッシュ・コンバージョン・サイクル)に対する意識が高まったことから、企業間電子商取引市場(BtoB)における売掛債権の早期資金化、回収代行機能としてのファクタリングが今後大きく期待されています。
第2の要因は、リスク構造の変化とそれに応じた与信の可能性です。急激な経済環境の変化や大企業の倒産に見られるような信用リスクの高まりとともに、ベンチャー企業等の育成の観点から、信用リスクに応じた資金調達の必要性が高まっています。AIの発展や情報基盤整備に代表される上述のIT技術の発展により、信用情報収集の効率性や与信精度が大きく改善されたため、資金需要者や取引自体のリスクを適切に分析し、リスクに応じた与信を行うことが可能なファクタリングに期待が集まっています。
第3の要因は、金融政策の転換です。政府の方針として、いわゆるメインバンクを中心とした間接金融から、市場を通じた直接金融への金融政策の転換が行われました。これに伴い、アセット・ファイナンスによるオフバランス化の一環として、売掛債権の譲渡を伴う流動化・証券化が一般的になるとともに、銀行借入に依存しない資金調達手段として、ファクタリングが注目されています。
第4の要因は、手形中心の商習慣の変化です。20世紀後半までは手形取引が広く行われており、企業における短中期間の資金調達として手形割引が広く行われていました。しかし、手形の流通量が低下するにつれて、資金調達手段としての手形割引が行いづらくなってきたことから、手形割引に変わる迅速な短中期間の資金調達手段としてのファクタリングの需要が増加しています。
第5の要因は、債権譲渡に関する法的環境の整備が進んだことです。債権譲渡登記制度の整備、債権法改正により将来債権譲渡が明文で認められたことや譲渡制限の効力が整理されたこと、ファクタリングの適法性に関する判例が蓄積されたことなども、ファクタリングが注目される要因として挙げられています。
上記のような背景のもと、経済産業省等もファクタリングが中小企業・ニュービジネスの支援に金融面で有効であることを認識し、関連法規の整備などインフラ整備にも積極的に動き出しています。
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※2020年3月の法律に基づいた記事です。